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2024年04月19日
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ドラマ・坂の上の雲

2011年12月30日
足かけ3年放送されたNHKのスペシャルドラマ、坂の上の雲が25日、放送終了!

というわけで、色々視聴者の立場から勝手に、偉そうに総評してみたいと思います(笑)


長いようで、短いドラマだったと思う。
原作では子規存命中の話なんて最初の方の数割、2、3割程度だろうか、というところなのだが、ドラマでは半分近くまで子規存命中の話だった!!
そういう意味で、長さが足りない!

まぁ、原作でも子規の死後、日露戦争の部分では小説の体をなしていない
というか、悪く言えば司馬史観に基づいた事実を殆ど羅列しながら、合間に著者自身の神の視点からの意見や注釈(しかも、「余談だが~」以下がやたらめったら長かったりする)が挟まれているのみといったところで、小説としての面白味に欠ける。

実際問題として、映像化すると陸軍パートのクライマックスシーンである旅順(及び二○三高地)攻略と奉天会戦、海軍パートのクライマックスである日本海海戦、それぞれとその他多くの戦闘シーンが大体似たような画となってしまうので主要箇所に限って日露戦争部分を圧縮したのは正解だったと思う。


ただ、あまりに圧縮しすぎた!
「俳句短歌といった日本の古い短詩形に新風を入れて、その中興の祖となった」正岡子規の偉業については子規の死に至るまでドラマ全体のおよそ半分の期間で割かし濃密に描かれていたと思う。


ところが、

原作では3人の主人公として登場し、ドラマにおいては全編を通した主人公格である秋山真之が活躍した日本海海戦では、確かに圧勝した、圧勝したはいいがなんだかドンパチやって知らない間に勝っていた。
何故勝ったのか、説明が乏しく、また「日露戦争が起こるに当たって、勝利は不可能に近いと言われたバルチック艦隊を滅ぼすに至る作戦を立て、それを実施した」として作戦を立案した事になっている秋山真之の作戦の立案シーンが全く!なかったので何がすごいのかわからないまま終わった。

真之の兄であり、日本騎兵の父と評された秋山好古に至っては、登場シーンも下手をすると子規より少ないんじゃないかという酷い干されように加え、何がすごかったのか良くわからない挙句、3年間ドラマの冒頭で散々「日本の騎兵を育成し、史上最強の騎兵といわれるコサック師団を破るという奇跡を遂げた」といわれていたのに、確かに騎兵を育成したのはいいが、どこでコサック師団を倒したのかすらよくわからないというありさまで、実にひどい扱いだった。
ただ、なぜか好古に始まり、好古で終わったドラマだった。





まぁ日露戦争については時系列上最後の方なのでひとまず日露戦争に関する話題はおいといて、とりあえず第一部の話題から。



第一部は戦争シーンが少ない!日露開戦してないし、日清はあっというま劇場だったし!
でも、ドラマとして面白かったのは第一部だと思う。
主役3人が子供から大人になっていく過程ということで、いわゆる青春群像劇で、主役3人が、3年間で最も主役らしかった。

基本的に平和な時代で安心して見られるシーンが多かったが、本作における最重要な事柄である日露戦争より何十年と前の話になるので役者さんと演じられている登場人物の年齢差が残念なことに……
真之役の本木さんは比較的若く見えたものの(流石?!元ジャニ)、好古役の阿部さんと子規役の香川さんはだいぶ無理があるように見えた。


ちなみに、演出として残念なのが子規が従軍記者として清国を訪れたシーン。
日本陸軍が略奪・暴行などを清国民に対して行い、清国民の反日感情を描いたシーンがあった。




!!!以下、しばらく歴史認識についてグダグダ!!!




太平洋戦争時ならそういう事があったという解釈もあるかもしれないが、さすがに日清戦争(1894~1895)時にはそういうことがあったとはとても考えにくい。

というのも、日本は近代国家としてはその数十年前に樹立した新しい国家で、国際的には当時の先進国(一等国)よりも格下の国だった。
西洋式の近代文明国家として後進国だった日本がどうにかこうにか先進国に追い付こうとした時代。

そのようなときに略奪暴行といった野蛮な行為をしてわざわざ日本の評価を下げるだろうか。
勿論、当時の先進国の中にも出征先でそのような野蛮な行為をしていた国もあった、とはいえ先進国がやるのとそうでない国がやるのでは心証が違う。

例えば、あまり良い例えではないものの、現代の日本で、日本人が犯罪を犯したとして、被告に対して悪い印象をもっても、だからと言って「これだから日本人はダメだ」と思う人は少ない。
ところが、この犯罪者が日本人でなく、東南アジアのような途上国から来た出稼ぎ労働者であった場合となると、極端な話「これだがら外国人は!出稼ぎ労働者受け入れ反対!」となってしまうのと似たようなところか。
元々信用がないと良くない行いをしたら一気に評価は奈落の底。

それと同様で、アジアの新興国家がそのような残虐非道な振舞いをすれば、「あぁ、やっぱりアジアの野蛮な黄色猿は……」ということで信用なんて-∞になってしまう。

とにかく明治政府は必死のパッチで国際的信用を得ようとした時代で、例えば普通、革命政権は前政権の借金など踏み倒すものであるが、明治政府という革命政府は徳川幕府という前政権の諸外国から借りた多額の借金を汗水流して働いて返した。
余談だが、これにより日本は欧州の金融会社から信用を得たことで日露戦争時に外債を売りつけることができた。

日清戦争後の義和団事件でも、天津・北京落城後、諸外国が略奪行為を繰り返す中、日本軍は規律正しく振舞い、任務終了後は直ちに帰国した。
日本にとって何より信用が欲しかった時代だからこそだろうが、結局これによりイギリスの信用を得て日英同盟に結び付いた。

というわけで、日本陸軍が清国民に対して非道な振舞いをしたというのは甚だ疑問が残る。




!!!歴史認識に関するグダグダはここまで!!!




このように歴史認識としてかなり怪しいことになっている箇所があるものの、その他の面では総じて出来が良かったと思う。

日本における最初期の(草)野球では投手は下手投げだったことも再現されているし、それ以外にも、街や市民の家の再現などは素晴らしかった。

日本アニメの巨匠、宮崎駿がかつてこのように言ったらしい。
「鳥瞰図の地上絵を本物らしく見せる方法」は「とにかく描きこむこと」だと。

ドラマ坂の上の雲でも、通常の大河とは違いこれでもかという程、大型のセットから小物までとにかく馬鹿正直に細かく丁寧に作られていると感じた。



というのが、第一部の総評。
日清での歴史認識に関する部分への批判が多くなってしまったが、やはり作品のクオリティ自体は高かった。



そして第二部。
この頃から真之の親友である子規や、広瀬武夫が他界したり、日露開戦で重苦しい雰囲気になるほか、


そろそろ誰が主人公なのだか分からなくなる。


原作以上に広瀬に存在感があり、ドラマ化するに至って原作「坂の上の雲」のみならず、「ロシヤにおける広瀬武夫」(島田謹二)をも参考にしつつ、ということで

ただでさえ原作を再現するには短いにもかかわらず、これにより一層原作を映像化する尺が減ってしまった。

とはいえ、帝政ロシアを原作以上に深く描くことで日露戦争における両国の立場や思惑などが一層分かり易くなったともいえる。

まぁ分かり易さを重視するなら間に11か月もあけて放送しないでほしいけども。

そしてロシア軍人で広瀬の友人であるボリス(中の人:アルチョム・グリゴリエフ(フィギュアの人とは別))がマジでイケメンすぎた。
彼は第三部では名前すら出なかったが、史実によると日露戦争後英国に亡命し探検家として大成功したらしい。

ボリスの「サヨナラ、タケオ」は二部屈指の名シーン。


それから二部でもう一人重要な人物といえば、子規。
子規は二部の途中で物語から退場してしまう。
晩年の子規を演じる香川さんの横顔は本物そっくりでびっくり。
病で死にかけの子規を演じるために体重を20キロ弱も落としたらしい。驚異的である。

ただ、子規の妹である正岡律の存在感がとんでもない。
そもそも、原作に律いたっけ?ってな感じなのに、ドラマ版では最初から最後まで、主人公であるかのごとく存在感があった。

どうでもいいが本物は菅野美穂ほど美人ではない(写真を見る限りは)



第三部のようにクライマックスシーンがあるわけでもなく、第一部のような青春群像劇的ドラマでもなく、なんとなく暗いシーンが多かった第二部はあまり印象に残らなかった感。




そして第三部。
もはや3人の主人公なんてなかった。
そして戦闘シーンだらけで、むしろよく放送したな、と感じた。
ちなみに戦闘シーンはサラウンドが生きすぎて音響面は素晴らしかった。(※ただし5.1chサラウンド放送はBSプレミアムに限る)


旅順総攻撃、二○三高地はもう主人公は乃木希典と児玉源太郎という感じ。
原作からしてそもそも乃木下げが凄まじいが、やはりドラマ化しても乃木下げがヤバい。
乃木無能説が大爆発を起こしている。
挙句、一次資料としては原作坂の上の雲しかないような児玉の割込み。
歴史ドラマとしてはどうかと思うが、原作がそうなのだからまぁ仕方がない。
とはいえ、これらの回では「殉死」(司馬遼太郎)も原作となっているので、原作の坂の上の雲より乃木下げは幾分ましに見える。
伊地知(陸軍の方。中の人がダンカンじゃない方)は相変わらずひどい扱いだったが。

まぁ、あくまで原作の映像化ということで歴史認識について深く突っ込むつもりはないが、もう少しフォローしてあげてもいいんじゃないかとも。
これまでに良くも悪くも原作にないシーン付け足してるわけだし。

二○三高地の「丸見えでありまーす!」は三部屈指の名台詞。
色々な思いのこもった「丸見えでありまーす!」だった。

しかし史実として最終的に旅順攻略に日本軍が成功したにもかかわらず、日本人ばかり死んでた印象。


そして、12話敵艦見ユと13話日本海海戦で日本海海戦を描く。
あれ?奉天会戦は?
好古は?

好古→騎兵を育てながらも、結局コサック相手には馬から降りて塹壕から狙撃することで勝ちました。あとは基本的に馬走らせてた。
3年間、ずっと冒頭で、さも騎馬戦をしたかのような映像つきでコサックを奇跡的に倒したと言い続けたにも拘らずこの扱い。
5分と取り扱ってもらってない気がする。

奉天会戦→最大の会戦だったにも拘らず、旅順がほぼ2回(180分)丸々つかって映像化されていたのに殆どナレーションで片づけられてしまった。
やはり陸戦はお金がかかるので奉天は旅順の犠牲になったのだろうか。


対して海戦は殆どCGなので陸戦より安くつく。
とはいえ、13話は最終回で戦後の話もあるので描かれたのは短い。
そして、主人公で参謀である真之が立案するシーンがなく、先方についても省略され、乙字戦法なんてなかったことになっている挙句丁字戦法についても碌に説明がなかった。
これは酷い。
原作で散々推されてた下瀬火薬も名前すら出なかった。まぁロシア側がなんだこの爆発は!的なことを言っていたから、なかったことにはなっていないのだろうけど。


というわけで、子規はともかく、残る二人の主人公はどうも消化不良の印象。
好古は最後は阿部寛さんが老けメイク(むしろ特殊メイク)で完全にジジイになってたけど、むしろそれくらいしか強い印象がないんじゃないかっていうくらい。
……そもそもあれが阿部さんかどうか疑わしかったけど、たぶんどうやら阿部さんらしい!

そして病院の廊下(の窓に見える雲、そして背を向けて歩く看護婦(看護師))をうつしドラマは終了。

あの最後のシーンは、好古が死去した年だから1930年ということになる。


ドラマの冒頭を思い出すと以下のナレーションがあった。
「主人公は、あるいはこの時代の小さな日本ということになるかもしれない。」
「上って行く坂の上の青い天に、もし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみを見つめて、坂を上っていくであろう。」


時代は昭和で、日本自体が既に先進国(列強)となり、日本という国が「坂の上の雲」である欧州の先進国を追いかけるという一つの時代が終わったということを強く暗示しているのかもしれない。
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